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『NETFLIXの最強人事戦略』を読んだ。

会社の同僚から勧められて『NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く』を読みました。 内容としては評判通り良かったです。人事だけでなく、経営者や組織やチームをマネジメントする方にもおすすめです。 僕は人事ではなくエンジニアですが、会社費用で勉強会やカンファレンスに参加できる制度など作ってみたり、育成やチームビルディングなどのエンジニアリング以外のことにも精を出しています。そういう活動を行う中でどうすればハイパフォーマンスを出し続けるチームを作れるのかを学びたくてこの本を読みました。

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

本文中でも紹介されていますが、もとになったculture deckという1500万回以上閲覧されたスライドです。

www.slideshare.net

また、最新のculture deckについてはNETFLIX社の採用ページで公開されています。

jobs.netflix.com

culture deckの日本語訳は以下のブログで読むことができます。

tkybpp.hatenablog.com

上記のリンク先を読んで興味を持った方は書籍も楽しめると思います。 人事担当である著者がハイパフォーマンスな組織作りのために取り組んだことが、NETFLIXの歴史とともに書かれています。

ここでは個人的に良かったところをピックアップして残しておきたいと思います。

"ネットフリックス文化の柱の一つは、「徹底的に正直であれ」だ。"

全体を通して「正直であること」の重要さが繰り返し書かれています。 悪いことに関しても言いにくいことに関しても、隠すより正直に話した方が良い結果が得られる経験はみなさんもあるのではないでしょうか。

"従業員の忠誠心を高め、会社につなぎ止め、キャリアを伸ばし、やる気と満足度を上げるための制度を導入することが、人材管理のしごとだとする考えである。そのすべてがまちがっている。ビジネスリーダーの役割は、すばらしい仕事を期限内にやり遂げる、優れたチームをつくることである。それだけ。"

"人は仕事に娯楽を求めない、学びたいのだ"
これは自分が成長できる場を求めている人が多いことが裏付けていると思います。全員がそうではないと思うが、成長できる場にいることで充実感を得られることはあると思うので、成長できる場を作れるようにしたいと思いました。もちろん自分も常に学びたい意欲があるので、そういった機会を大切にしてくれる仲間と働くことを大切にしていきたいと思いました。

"成長が始まったばかりの段階で莫大な先行投資をするということは、ビジネスモデルを成功させるために時間をかけていられないことを意味する"

"事業そのものの性質や課題も変化し続けていた。これに合わせて、私達の発するメッセージもたえず確認し更新していく必要があった。これは永遠に続けなくてはならない仕事だ。"

"相手のいないところで不満をぶちまけたことを反省する。そして次に、同じ内容を感情を交えずに話す方法を練習した。また問題行動の具体例を挙げ、解決策を提示することも大切だと教えた。こうしたルールにしたがえば、対話はとても建設的なものになる。"

感情を交えずに話すことは難しいと思います。どうしてもヒートアップしてしまうこともあります。ただ決まってそういったときに建設的な話ができたかというと経験上ほぼ無いのでここに書かれていることはぐさっと刺さりました。

"うまく話せるようになるには、練習が欠かせない。鏡の前でやってもいいし、パートナーや友人を練習台にしてもいい。話すつもりのことを実際に声に出して練習すれば、自分の声のトーンを聞くことができる。録音するのもお勧めだ。"
僕は勉強会などで登壇することがあるのですが、練習時に録音を行うようになって後から聞き返すことで客観的に振り返ることができるようになり良い練習方法だと効果を実感しています。スマートフォンで録音するアプリもあり試しやすい練習方法なのでお勧めです。
また、人に聞いてもらうのが一番良いです。素直なフィードバックをいただけるのは恵まれたことだと感じています。僕は会社の人や妻にたまに聞いてもらっています。

"透明性を徹底すれば、誰もが自分の支持した立場に責任をもち、事後的に批判することも少なくなる"

これはチームで何かをするうえでは結構重要だと考えています。僕の場合はそれがWebサービスの開発なのですが、例えばアーキテクチャに関する方針や大事な設計部分に関してはなるべくチーム内で事前に共有して合意や承認を得るようにしています。
GitHubを使っているのであれば、Pull Requestがあるので自然とこの流れになります。一人の責任にならないようにして、失敗を恐れないようにしなければ変化は生まれないと考えています。

"人材の濃度を高く保つことに徹底してとりくまなくてはならない"
すごい同僚と働けることがモチベーションの向上に繋がるのは前述した「成長できる場」を求めることと関連していると思います。
社内で切磋琢磨できる環境が用意されていなければ、いい給料でもどこかで虚しさや飽きを感じることはあるのではないでしょうか。

"私がネットフリックスで真っ先にやったことの一つが、給与制度と人事考課のプロセスを切り離すことだった"
人事考課制度は、時間がかかって非効率だと説いている。確かに時間がかかります。しかも人事考課を行うのは役職に就いている方が多いのでそのコストは大きいと感じます。ネットフリックスでは人事考課で給与を決定するのではなく、その人が会社に与える利益に基づいて給与を決定しているみたいです。ネットフリックスでは定期的に他社の面接を受けに行くことを推奨していてネットフリックスが他の会社と遜色ない水準の報酬を与えているかチェックさせているそうです。これが最も効率的かつ確実だと。

"企業は従業員に報酬の根拠を説明する努力を惜しんではいけない。"
報酬に関する情報を従業員と共有することで偏見を減らし、業績への貢献について正直に話し合うことができるとのことです。
確かに入社時期や性別や学歴など様々な要因で成果に見合わない報酬を受け取っている人は多いと思うし、それが嫌で退職する人も多いと感じます。

"人事考課が何らかの重要な経営指針の改善に役立っているというたしかなデータを見つけられないのなら、廃止を働きかけることを強くお勧めする。"

"新しく採用した人材が職務に適していないことが判明した場合、問題があるのはその人ではなく採用プロセスだ。たんに不適当な人材を採用してしまったというだけで、その人の責任では断じてない!自分に非があると思わせてはいけない。"
他の会社ではすごく活躍できるのに、今の会社では活躍できていないって人は大勢いると思います。僕が勤めている会社の中にもそんな感じがする人はいます。(今の会社以外で一緒に働いたことないので想像ですが)
ネットフリックスでは積極的に解雇しているそうです。それでもほとんどの人が受け入れているそうです。

"あなたの仕事は、彼らに力を与えることではない。彼らの力を認め、時代遅れの方針、手続き、制度を廃止して、力を解放することだ。それさえ行えば、彼らはパワフルになる"
これは読者を人事担当に見立てて語りかけるように話しかけている最後の1文です。
昔からこうだからという理由で続けている非効率な社内制度や手続きはないだろうか?同僚に対して承認ではなく批判ばかりしていないだろうか?お互いが正直に話合えているだろうか?そういうことを見直さなければならないと考えさせてくれる良い本でした。

繰り替えしになりますが、人事だけではなくチームで働く人すべてにお勧めできる内容になっていると思います。250ページ弱で文体も堅苦しい感じではないので読みやすいのでもし機会があれば読んでみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。