この記事は社会人学生 Advent Calendar 2021 - Adventarの 16 日目の記事です。投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。なんせこれから話す大学の課題に追われていてなかなか執筆の時間が取れませんでした(言い訳)。
私は、Web エンジニアとして働きながら昨年の 9 月からオンライン大学でコンピューターサイエンスを学んでいる 30 代男性です。また、未就学の子どもの育児もしています。
今回は、私が登録している University of the People というアメリカのオンライン大学について、入学してみて感じたこと・学習内容・魅力などを紹介します。同じようにコンピューターサイエンスの学部へ進学したい方やアメリカの大学に興味がある方、働きながら大学で学ぼうと考えている方の参考になれば幸いです。
目次
- 目次
- アメリカのオンライン大学へ行くきっかけ
- University of the People って何?
- どんなことを勉強できるの?
- どんなことをするの?
- 必要な英語力は?
- これまでに学んだこと
- 学割が使えるサービス
- 日本人の生徒が多い
- UoPeople をおすすめしたい人
- まとめ
アメリカのオンライン大学へ行くきっかけ
いきなり自分語りになってしまいますが、簡単に大学へ行く背景を説明します。
私は Web エンジニアとして 10 年ほど働いていますが、出身が文系で情報系の学部を卒業していないという劣等感みたいなものがありました。また、Web やアプリケーション開発の知識はそこそこありますが、コンピューターの基礎的な知識に抜けがあると感じていました。
アカデミーに対する劣等感や危機感は @laco2net さんのブログに共感しました。この記事を読んでから、大学進学をより意識するようになったと感じます。
それから、世界的な企業の採用募集の要件にはコンピューターサイエンスの学位が含まれていることもあり、今後のキャリアの幅を広げるためにもコンピューターサイエンスの学位を手に入れたいと考えていました。
どの大学へ入学するか悩んでいたところ、同僚の @koba04 がアメリカのオンライン大学のコンピューターサイエンス学部に入学しました。話を聞いて良さそうに感じたので入学を決意しました。
University of the People って何?
私が登録している University of the People (UoPeople) は授業料が無料のアメリカのオンライン大学です。
授業料が無料
経済的に大学へ行くことが困難な方に高等教育を受ける機会を与えたいという思いから創立されました。
創立者のシャイ・レシェフさんの TED での講演を見ていただけると、レシェフさんの思いを聞くことができます。
とはいえ、卒業まで全くお金がかからないというと、そうではありません。運営に必要なコストを支払う必要があります。期末試験の受験料として 1 授業につき 100 ドルかかります。卒業までに約 40 授業を受講するため、卒業までに約 4000 ドルかかります。 また、入学手続きに 60 ドルかかります。
しかし、日本の国公立大学でも何十万〜何百万円ほどかかりますし、アメリカへ留学するとなると何百、何千万の金額がかかるそうです。そのため、学びたいことがあってコストを抑えたい人には UoPeople は良い選択肢だと思います。
すべてオンラインで行われる
UoPeople への登録はオンラインで済みます。高校や大学などの卒業証明書や必要な書類をオンラインで提出してます。 教科書は紙ではなく、PDF や Web ページです。そのため、インターネットさえあればスマホでも PC などを使ってどこからでも勉強できます。
教科書や課題や試験は Web サイトまたは Moodle というアプリを使って閲覧することができます。また、課題の提出もこれらを使って行うためすべてオンラインで完結します。
自分のペースで学ぶことができる
世界中の様々な状況の方が UoPeople に在籍しています。そのため、決められた時間に講義を受ける形式で勉強をしません。毎週、課題を提出する形式で勉強します。そのため、「今週後半は忙しくなるから前半で課題を全部やってしまおう」など自分のペースに合わせて学習時間を確保することが出来ます。
また、年間 5 学期で1学期は 9 週間ありますが、学期ごとに授業を取らないこともできます。つまり、「来月から仕事が忙しいから、次の学期は授業を取らない」といったことが可能です。そのため、働きながらでも学業を続けやすくなっています。
実際、私も忙しいときは授業をとらずに約 2 ヶ月間大学生活を休む時期もありました。
コースが始まっても途中でドロップすることも可能です。1 週目であれば、成績表には何の影響もありません。4 週目までにそのコースを止めると成績表には"W"と付いてしまいますが、成績の平均値(grade point avarage)には影響がありません。grade point avarage が大学院などへの進学に影響することもあるので、受講しているコースを途中でやめるのであれば 4 週目までに行うほうが良いです。
学位の取得、他の大学や大学院への進学が可能
UoPeople を卒業すると、学位が与えられます。この学位は また、取得した単位を使って他の大学への編入や大学院への編入ができます。
UoPeople からカリフォルニア大学バークレー校へ進学された日本の方もいます。
Meet our #alumna, Mieko! Watch this video to learn more about Mieko's #education journey at #UoPeople that led her to #graduate from @UCBerkeley! Save Your Spot for Next Term by this Saturday, January 16th. Start Your Application Today: https://t.co/DJ5Kzm2nl4 @nasdaily pic.twitter.com/XX8fZ9T4SC
— UoPeople (@UoPeople) 2021年1月11日
コンピューターサイエンスの学士の学位を取得できるオンライン大学は日本には多くありません。また、あったとしても一定量の通学が必要だったりします。休日に通学したり、会社を休んで通わなければいけないかもしれません。それは大変なので避けたかったので、オンラインだけで済ませられるところが良いと考えました。
次の大学は私が検討した日本の大学の一例です。
- 北海道情報大学
- 情報学が学べる
- オンライン授業
- 夏と冬にスクーリング(通学)が必要
- 全国にサテライトキャンパスがあるので、北海道まで行く必要はない
- 放送大学
- 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
- 奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)
その他にもコンピューターサイエンスの学位がとれるオンライン大学はあるみたいです。
日本で取得済みの単位を移行することが可能
UoPeople はアメリカの大学ですが、日本の大学で取得済みの単位を UoPeople へ移行することが可能です。必ずすべての単位が認められるわけではありませんし、移行できる単位には上限があります。
- 短期大学士課程: 45 単位まで移行可能(卒業するには 60 単位必要)
- 学士: 90 単位まで移行可能(卒業するには 120 単位必要)
- 修士: 18 単位まで移行可能(卒業するには 36〜39 単位必要)
私はコンピューターサイエンスや数学は勉強したいですが、その他のコースはできる限り単位移行して、受講しなくて済むようにしたいと考えています。
また、Coursera や Sophia といった他のオンラインサービスで取得した単位を UoPeople へ移行することも可能です。これらのサービスで単位を取得するほうが UoPeople で単位を取得するより楽みたいです。私はまだ試していませんが、興味のないけど卒業に必要なコースはこれらを使って単位を取得しようと考えています。
どんなことを勉強できるの?
UoPeople には、4 つの学部があります。
- 経営学(Business Administration)
- コンピューターサイエンス(Computer Science)
- 保健学(Health Science)
- 教育額(Education)
選択した学部とは関係のないコースも受講できます。たとえば、コンピューターサイエンスの学部生であっても、美術史や経済学などを学ぶことができます。
また、学部に関する学科以外の単位も必要です。たとえば、コンピューターサイエンスの学部でも一定の単位数分の文系のコースを受講しなければいけません。これらを受講したくない場合は、先述の単位移行や他サービスでの単位取得を行うのが良いかと思います。
コンピューターサイエンスに関する様々な学科が用意されていますが、次の一覧は一例です。
- プログラミング基礎 & 応用
- コンピューターシステム
- Web プログラミング
- ソフトウェア・エンジニアリング
- オペレーションシステム
- データベース
- データ構造
- データマイニング&機械学習
- 大学代数学
- 微積分学
どんなことをするの?
年5学期あり、1 学期につき 9 週間あります。学期ごとに 1 コースから受講可能です。
年間スケジュールは次のリンクから確認できます。
9 週間のうち、8 週間は課題提出を行います。その 8 週間で 2 回の中間テストがあります。9 週目は期末試験を行うだけで、課題はありません。
課題や試験は決まった日時に行う必要はありません。期限までに行えば OK です。毎週出される課題をどの順番で行うかも自由です。なので、時間の融通は非常に利きます。
毎週の課題量は多いです。内容が難しくなくてもそれなりに時間がかかります。私は得意な科目でも課題に毎週 5〜10 時間を費やしていましたし、苦手な科目では 10 時間以上かかることもあります。
プログラミングのコースを例にすると、1 週間で次のような課題を行います。全部英語で書きます。
- Discussion Assignment
- Programming Assignment
- Learning Journal
- その週のふりかえりを 500words ぐらい書きます。
- 今週は何をやったか、何が難しかったか、どういった知識を得たか、のような質問がいくつか出されます。
- 採点は講師が行います。
- 講師によって採点の甘さが変わります。
- 毎回有意義なフィードバックをくれる講師とそうでない講師がいます。
課題の他に試験もあります。
- Self-Quiz
- 問題集のような位置づけです。
- 10 問前後の問題を選択形式で答えます。
- 成績には反映されません。
- 何度でも回答できます。
- 後述の Graded-Quiz や Final Exam で全く同じ問題が出るので、満点取れるまで回答しておいたほうがいい
- Graded-Quiz
- 中間試験のような位置づけです。
- 25 問前後の問題を選択形式で答えます。
- 成績に反映されます。
- 制限時間が決まっており、一回のみ受験可能です。
- Self-Quiz で出題された問題がそのまま出ることが多い
- Final Exam
- 期末試験のような位置づけです。
- 30〜40 問ぐらいの問題を選択形式で答えます。
- 成績の大きな割合を占めている
- Self-Quiz で出題された問題がそのまま出ることもある
ひと学期の 9 週目は Fianl Exam だけで課題が無いので、Final Exam さえやってしまえば次の学期までの 2 週間は休みです。
必要な英語力は?
教科書も課題も試験も手続きも全部英語を使います。それなりの英語力が求められます。
そのため、英語力が入学要件になっています。次のいずれかの資格を保有していることが入学要件になっています。
その他にも ESL なども要件になっています。詳しくは以下のリンク先をお読みください。
上記の資格が無い方でも、後述する English Composition 1 の授業で 70 点以上の成績を取ると、入学が認められます。
私は TOEFL や英検の資格を持っていなかったですし、本格的に入学する前に大学の雰囲気を知りたいと思って English Composition 1 の授業を受けることにしました。
また、課題を行うための英語力は読み書きができれば問題ありませんし、わからなければ DeepL などの翻訳ツールを使えば全然良いです。英文法に関しては Grammarly を使えば無料でチェックできるので、課題提出前に Grammarly を使って校正すると良いと思います。
私は次の順番で課題の英作文を行っているので、参考にしてみてください。
- まず日本語で書く
- 日本語を自力で英作文する
- わからない単語は辞書などを使って調べる
- Grammarly を使って英文法やスペルチェック
- できあがった英文を DeepL で翻訳して、意味のわかる日本語になっているかチェック
- Citation Machineを使って APA スタイルで引用や参照が書けているかチェック
これまでに学んだこと
私はコンピューターサイエンス(計算機科学)の学部生なのでその他の学部の内容は知りませんが、学びは多いです。また、課題が多いですし、すでに知っていることであっても説明文を簡潔に書くことは難しいです。 また、知らない単語も多く出てきますし、毎週 1000word ほどの英文を書く必要があります。 楽ではありませんが、普段仕事していたり自習だけでは得るのが難しい知識や視点を学ぶことができますし、英語力も身についていきます。
これまで次のコースを受講しました。
- English Composition 1
- 英作文に関するコースです。
- 英語の論文の構成や書き方を学ぶことができます。
- リファレンスや引用の書き方について学ぶことができます。
- 他のコースでも必須の知識になるので最初に学べてよかったです。
- 先述の Programming Assignment の代わりに Writing Assignment という英文を提出する課題があります。
- 英語の小説やエッセイを読んだ感想などを指定された語数以上で英作文します。
- 入学のための英語力の要件になっています。
- 70 点以上の成績で終える必要があります。
- 最終試験は Proctor と呼ばれる試験管の監視のもと行われます。
- リモートで自分の PC を操作されます。
- PC のシステム設定をバンバン変更してきます。
- 機密情報などが含まれた PC では受験しないようにしたほうがいいです。
- 試験官とある程度英語のやりとりが発生します。
- カメラを使って試験管に周囲の状況を見せなければいけません。
- Online Education Strategies
- 入学して最初に必ず履修しなければいけないコースです。
- オンライン大学では何を学べるのか、どうすれば学習を成功させられるかを学びます。
- 先述の Programming Assignment の代わりに Writing Assignment という英文を提出する課題があります。
- 課題で書かなければいけない英文の量が多いです。
- 課題の量が多く、週 10 時間以上を費やすこともありました。
- タイムマネジメントやストレスマネジメントなど実生活に活かせることも学べます。
- ノートのとり方の授業は面白かったです。
- コーネル式ノートのとり方は知りませんでした。
- コーネル式は iOS アプリ「Good Notes 5」にもテンプレがあって便利です。
- とにかく辛かった思い出しかありません。
- Programming Fundamentals
- Programming 1 & 2
UoPeople で学べることは学問だけではないと感じることがあります。 様々な学生がいますので、新しい出会いや発見も多いです。他の国の人とコミュニケーションをとる機会は普通に日本で過ごしていると得られない機会なので貴重です。これまで同じコースになった方でもメッセージで雑談したり、SNS でつながったりしました。
学割が使えるサービス
Apple の学割や一部サブスクなどで学割が使えます。私は次のサービスで学割を利用しています。
- Apple Music
- 学割料金: 480 円
- YouTube Premium
- 学割料金: 680 円
- Apple 製品
- JetBrains
- IntelliJ IDEA などが無料で使えます。
- Microsoft Office 365
- 大学から配布されるメールアドレスでログインできます。
- OneDrive 1TB が無料で使えます。
学割が利用できないサービスは次のようなサービスでした。いずれも試してみましたが、日本の大学に在籍している場合のみ適用できるようです。
日本人の生徒が多い
UoPeople で学んでいる日本人の方は結構多いです。日本人学生のための Slack ワークスペースもあります。
身近な人だと同僚の @koba04 や 元同僚の @zaki___yama がいます。気軽に情報交換したり雑談できる相手が身近にいるのはありがたいことです。
また、UoPeople に関する日本語情報を発信していただいている方もいます。いつもお世話になっております!
次のブログはほんの一例です。よく読ませていただいています。
universityofpeopleforjapanese.blogspot.com
UoPeople をおすすめしたい人
時間の融通を重視したい人
UoPeople は、決まった時間に授業を受けたり試験を受けなければいけないわけではありません。期限までに自分で提出すれば OK です。ですから、働いている人や家族との時間を確保したい人など時間的制約を受けるのが厳しい人にとってはとても良い選択だと思います。
しかし、タイムマネジメントを自分でしなければいけないので、そういった自己管理が苦手な人には厳しい環境かもしれません。課題は 1 分でも提出期限に遅れれば提出できません。課題が提出できなければ、その課題の点数は 0 点です。
英語の Writing / Reading も学びたい人
英語で勉強したい人にもおすすめです。知らない単語や表現をたくさん知ることできますし、ある程度の量の英文を毎週書くので英作文に慣れます。ただし、会話や授業の聴講はほぼ無いので、リスニングやスピーキング能力の成長はあまり期待しないほうが良いです。英会話ができるようになりたい人にはおすすめしません。
コンピューターサイエンスについて学びたい人、知識の幅を増やしたい人
学べる内容は期待通りかそれ以上と思って大丈夫です。一応、私は約 10 年職業プログラマをやっていますが、UoPeople で新しい学びはあります。特に Web エンジニアが普段書かないようなコードを書くこともあったり、理解しているつもりだった事も改めて説明するのが難しかったりします。なので、すでに知っている事でもさらに深い知識を得ることができたり、整理できたりすると感じています。しかし、とにかく最短コースで職業プログラマになりたいとかすぐに収入を上げたいと考えている人には、あまりおすすめしません。そういう方は OSS 活動やアウトプットや業務知識を増やすことに時間を費やしたほうが良いかと思います。
コンピューターサイエンスの学位がほしい人やアメリカの大学・大学院に進学を考えている人にはおすすめできます。しかし、コンピューターサイエンス以外の授業も多く、費用も完全無料ではありません。学位にこだわりがなくコンピューターサイエンスを学びたいだけなら、Coursera などの MOOC のほうが費用も安く希望が叶うかもしれません。
家族や身近な人の協力を得られる人
また、家族の協力なしでは、学業は難しいと感じています。幸い妻が協力的なのですが、休日に課題をしなければいけないこともあったりして家族との時間がとれなかったり、家事や育児を任せがちになってしまっていて非常に申し訳なく思います。協力してくれる家族には感謝しています。 もし、家族や身近な人からの協力や理解を得られず、時間を確保することが難しいのであればおすすめできません。
まとめ
- University of the People は授業料無料で完全オンラインで学べる大学
- 時間の融通が利く
- 日本で取得した単位の移行が可能
- 毎週の課題提出は大変で、それなりに時間がかかる
- 英語の読み書き能力は必要だが、ツールを使えばハードルは下がる
- 学習内容は満足度が高く、レベルは低くない
これまで、あまり大学生をやっていることを公言していませんでしたが、これからは受講したコースのまとめや感想などをこのブログでお伝えできるようにしたいと思います。もしよろしければ、Twitter のフォローやこのブログの読者になっていただければと思います。先述の Slack にも居ます。
そして、もしこれを読んでいるあなたが UoPeople の学生であったり、社会人大学生だったり、子育てしながら何かを勉強していたり、コンピューターサイエンスを学んでいたりしたら、ぜひ情報交換したりコミュニケーションとったり仲良くしてもらえればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。