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多様性のある組織にしたら離職率が下がった / 『チームのことだけ、考えた』を読んだ

著者はサイボウズ青野社長。この本はサイボウズの創立から現在までを辿りながらチームワークのことやサイボウズの多様性のある組織作りについて試行錯誤を繰り返して学んだことについて記されている。 かつて28%あった離職率をどのように4%にまで下げたのか。そのキーワードは多様性だった。

サイボウズの多様性を考えて取り組んでいる制度や考え方についてはオウンドメディアで発信していて、サイボウズといえばこのサイボウズ式の印象が強い人も多いのではないかと思う。
サイボウズ式 | 新しい価値を生み出すチームのメディア

特に印象深かった言葉をメモとして残しておく。

人間は理想に向かって行動する

現実として「空腹」で、理想として「満腹」があったとき、「食べる」という行動をする。とてもシンプルな法則だ。 社員が辞めるのも辞めることで理想を実現したいからである。 「人間は理想に向かって行動する」シンプルだが最重要な基本原理だ。サイボウズでは組織全体で最高最大の理想を決めることで一体感が生まれると考えた。会社全体で共通の理想を探すことが最も大切であると考えた。

公明正大

の場でるみに出ても、しいときな声で言えること」 これはサイボウズの中でも特に重要な行動規範である。
元々は「誠実であること」としていましたが、抽象すぎるとのことで「正直であること」に変わった。しかし正直すぎるのにも問題があったので、この公明正大になった。
サイボウズ社はとにかく嘘はつかない文化を築いてきた。

「100人いれば100通り」の前提条件

このビジョンには「1人1人が自分の理想を言葉にして伝えることができる」前提条件がある。多様性のある組織なのでは、「質問責任」と「説明責任」が必要である。「質問責任」とは自分が気になったことを質問する責任であり、自分の理想を伝える責任であり、その結果、自分の理想が叶わなかったとしても受け入れる責任である。「説明責任」とは自分の意思決定について説明する責任であり、他のメンバーからの質問に答える責任であり、その結果、批判があっても受け入れる責任である。
多様性のある組織の中では、この「自立」の精神が必要である。

「事実」と「解釈」は別物である

実際に起こったことが事実で、それを見て思ったことが解釈。たいてい事実は大したことなく、解釈を付け加えることで人は感情的になる。
事実は、五感で確認できる確かさの高い情報。解釈は、事実を得て考えた情報である。事実は人を通じて解釈になる。事実がinputで解釈がoutput。解釈は人によって異なるため、事実を共有しなければ共通認識を持つことは難しい。しかし、解釈によって自分の意欲を高めることができる。どの事実をどのように解釈するかで大きく行動が変わる。事実と解釈を使い分けるスキルが重要。

サイボウズ式・問題解決メソッドでは
①「問題」を発見する
②「問題」を認識する
⇛以下の表に分類する

解釈 事実
理想
現実

③「原因」を検討する
⇛「現実」の「事実」を引き起こした「原因(人の行動)」を探求
④「課題」を設定する
⇛「原因」に対応する「課題」を設定

例えば、ソフトウェアに問題があったとき以下のように分類できる。
現実は、「不具合が多い」状態
原因は、「不具合を出した」から
理想は、「不具合が少ない」状態
課題は、「不具合を減らす」こと

「モチベーション」とは「理想に対する思いの強さ」

モチベーションが高いほど、その理想にを実現するために進んで行動する。例えばとても痩せたい人は、多少お腹が空いても、画面して炭水化物の摂取量を減らすだろう。 モチベーションの制御には3つの条件が揃う必要がある。やりたいこと(Will)、できること(Can)、やるべきこと(Must)の3つである。もしモチベーションが下がったのであれば、3つの要素に分解して課題を設定する。

給与は「市場性」で決める

決まった基準で評価しても、その基準は誰かにとって有利であり、誰かにとって不利である。完全な公平など存在しない。社員同士を比較するのは難しいので、もしその人が転職するなら、果たして給与はいくらになるかで決める。
給与のグレード(等級)は社員をカテゴライズし、多様な社員が増えるほど比較して説明することは難しいのでグレードは廃止した。
もし全社員が給与を下げることなく転職できる状態であれば、いつサイボウズがつぶれても生活に困らない。それでもあえてサイボウズで働き続けたいといってくれる状態が理想だと考えた。

長時間同じ職場にいる必要はない

以下のことができていればチームワークができる。長時間同じ職場にいる必要はない。

  • コミュニケーションをとる
  • 共通の理想を決める
  • 役割を分担する
  • 互いの仕事の進捗を確認する
  • フィードバックし合う
  • 相互に調整する

「制度」は「風土」とセットで考える

サイボウズの人事制度についてはウルトラワークなどとても有名なものがある。それらについてはサイボウズ式に記載されているのでそちらを読んでほしい。
人事制度は作るだけではダメで、文化を変えなければならない。制度を活かすために、企業の風土を変える必要がある。しかし、風土を変える活動に終わりはない。

高い理想への共感が必要

多様性のある組織において、緩さが行き過ぎないようにするには、理想を強く持つことが大事。サイボウズでは「グループウェア世界一」という高い理想への共感が必要。

最後に、サイボウズは国内でも数少ないグローバル展開している企業である。
それゆえに企業として国内に留まらず、海外でも採用しており社員数も数百名と大企業になった。しかし、サイボウズでは多様な働き方が維持できている。
多様性を重視した結果、離職率も低い数値を維持できている。
簡単に真似できることではないが、この先より一層人材を確保することが難しい時代になると考えられる。人材流動性も一層高くなるし、複業も当たり前になる時代になるでしょう。
その時代を迎えるにあたり、各企業はサイボウズのような多様な働き方を取り入れざるを得ない状況になる。
働き手にとっても多様な働き方ができる企業は魅力的に感じるであろう。そのため、サイボウズはこれからも伸びるのではないだろうかと考えている。

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